プロフィール
青木 健
青木 健foaf.rdf
青木 健(あおき けん)イラストレーター。 日本初のラーメン専門誌「月刊とらさん」にて漫画を連載中! ラーメンは数ではなく愛がモットー(1週間で29杯が最高)。 ラーメンをテーマにしたTシャツ屋さん【ラ部】を運営中!
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2008年03月11日

モテラー

話に聞いただけで見てはいないのだが、先週の「週刊SPA!」で、
「美人OL100人が認定[非モテ男検定]’08年春」というのがあり、

「最も付き合いたくない[通]は[ラーメン/格闘技/ワイン]のどれ?」

というような質問が書いてあったそうです。答えは検索しても
見つからなかったんですが、興味のある方はご自分でお調べください。
おそらく並んでいる順でしょう…(その前提で話を進めます)。
というか、こうして並べられただけでそれは「晒し」ですからね。

ワインはさておき、この場合の「ラーメン、格闘技」の2項目による
殺傷率がいかに高いか、想像に難くありません。

これは「オタク」の概念とつながる深い話なので、その方面からも
膨大なテキストを駆使したいところなんであるが、面倒なので割愛。
なぜラーメン通が女性から低く見られるのかといえば、
それは「世界が閉じている」からである。

その「美人OL100人」がどれほどのモノだか知りませんが、
まず「モテる」ということをわたしなりに定義してみましょう。
一般的に「モテる」という言葉で表される実際の意味は、
「大多数の、平均的な異性たちからチヤホヤされる」
ということに他なりません。
どちらかというと自分に自信がない、自分で決定できない、
大多数の意見に従わないことに(無意識だが)不安を覚えている、
世間的評価に左右される、噂話に乗れないことを恥だと感じる、
そして、それゆえに(時に積極的に)「行動」できる…
そういうタイプの女性(男性)が、
「世間(大小問わず)からなんらかの称号を与えられた異性」に群がること。
そうでなくては「モテる」という状態は存在しえないし、
だからこそ「モテる人はもっとモテる」ことになるわけですからね。

しかしそんな状態は、実際の「幸せ」とは関係はあってもイコールではない。
(かのキムタクも、職業・木村拓哉としてはモテ状態も嬉しいでしょうが、
 一個人としては、売れない頃から大大大好きだった工藤静香とヤレた
 もとい結婚できたことの方がずっと幸せでしょうし、むしろその幸せを、
 モテ状態が支えてくれてるに過ぎないのですから)

そういう、言ってしまえば「大多数女子」が望む理想像を目指すことは、
ほとんど無理な上にくだらな過ぎます。
バブルの頃にみんなして石田純一になろうとしたようなものです。
時代時代のホストを見れば一目瞭然ですが、モテ的頂点を目指している
ようでいて、それは同一のスタイルを構築し、制服・記号となって、
非常に中庸化しています。
品質とデザインにこだわり抜いてルイ・ヴィトンを選ぶ日本人が
ほんの一握りであるように。


だから「女から格別モテなくて結構」なわけですが、それが「誰からも」
となると、成人男子として他に問題があるということになります。
 生涯未婚率では現在、男の6人に1人が独身のまま生涯を終えます。
 そして未婚男性は既婚者に比べ、平均で10歳も早死にするという
 データが出ているとのこと(不規則、ストレス、生き甲斐の欠如)。

皆さん、生命の危機です。


では、そんな大多数女子が男のラーメン趣味を敬遠するのは何故でしょうか?
ラーメンが安い食べ物、庶民の食べ物というレッテルを貼られてきたので、
「負け組」な印象を拭えないのかもしれません。
今回の場合、「男の趣味」について語られていることから、
女友達に「わたしの彼はワインにうるさ過ぎて困るのォ〜」という、
イヤミな自慢ができないからかもしれません。
少しはあるでしょう。しかしそれだけを原因とするのはあまりに短絡的。
大多数女子も、単純にラーメンが嫌いということではないはず。

「ラーメンがイヤ」というより、
「ラーメン『だけ』なのがイヤ」。
もっというと、
「ラーメン『だけ感』がイヤ」なんだと思います。

その閉塞感。
ラーメンに限らず、どんなジャンルでも言えることですが、
面白い伝え方、カッコいい見せ方、人と違う会話、女性にとってのメリット。
そういうものなくして、女子の心には響きません。
精神論では女性は絶対に動かない。
「すげえ厳選食材を使ってる、コダワリ職人なんだよ!」で喜ぶのは男だけです。

それは美味しいの? 体にいいの?
おトクなの? 行ったことが自慢になるの?

そういった女子の非ロマン、現実主義を受け入れる覚悟を持ち、
疑問に対する優れた回答を提示する必要がある。

ラーメンには、男女ともに(絶対数としても歴史的背景としても)
「男の食い物」という認識が根強くあります。
だから、男がラーメンについて女子に語るということは、あらかじめ
「女子にはわからない分野について自慢する」という無意識下での
優越感が少なからず働いている、と考えられます。
これは格闘技においてもそうだし、他にはガンダムなどもそうでしょう。
その狭さ、自分の土俵、内輪受け感が、非グローバルな男を演出して
しまっているのです。
これは男の競争原理に基づく指向であり、ある意味仕方ないのです。
しかし現代はそれを振りかざせるほど単純ではないため、
ますます男のベクトルは自分にスウィートな内側に向かうわけですが、
「どうせ女にはわかんねえよ」という思考停止をも、女子は見抜いています。
閉じている男の、生存能力の低さを嗅ぎ取っているのです。
女子が最も忌み嫌うもの、それは生産性のなさです。
(ついでにいうと、女子の大好物「ギャップ」も、そこにはありませんね)

女子に対し、優れた提示ができるということは、ことによると
腕力、財力、権力以上に、基本的魅力といえます。
男ならば、不毛な集団「大多数女子」から引き揚げてあげるくらいの
力が必要だということです。


わたしはラーメン好きな女性を何人か知ってますが、とても身綺麗に
されている方や、話していて面白い方ばかりです。
その方々には「大多数女子」の資質は感じられません。むしろ男です。
(男らしい言動をするという意味ではありません。そういう行動は
 恥じらいの強さに起因する場合が多く、得てして女性的です)

「おいすいネ〜」なんて共同確認をせず、黙って啜る猛者ばかり。
わたしにとってラーメンは女性名詞であり、ラーメンと対峙するときは
誰もが男になっていなくてはならない。
女性ならばやはり“タチ”になっていなければならない。
彼女たちは、少数派女子として生まれたか、そうではない自分を羞じ、
平均化に逃げ込むことなく、自らに磨きをかけてきています。
そういう女性と好き同士になれればいいわけですが、
モテない男としては、それではちょっと数射てる的が少な過ぎます。
ラーメン好きな女性の中にも、間違いなく「開かれたラーメン男子」によって
開眼した方もいるわけですし、ラーメンを物差しにしない方が健全です。
予定調和はやはり自慰的であり、未知との相互理解こそが恋愛です。
(たとえそれが思い込みによる誤解であろうとも)

【余談1】
 「ラ部」もそういうところを開いていきたいと思っています。
 「ラーメン○○」って書いてあるTシャツの男と、誰が歩いてくれようか。
 誰が裏原宿のカフェに入ってくれようか。女友達に会わせてくれようか。
 開かれたラーメン世界のために(同時にそれ以上の自己満足を含む)
 必要なアイテムでありたい。
 どんなものでも、世界を広げるには異分子による化学反応しかない。
 そしてラーメンにとって女性というのは、単に女性客ということ以上に
 その可能性を秘めていると思います。
 なぜ蕎麦ならいいのか。パスタなら更にいいのか。
 料理そのもの以上に、伝統やイタリアがそんなにも大事なことなのか。
 そこを変えてみたい。ラ部Tシャツは、ラーメンの応援旗です。


ちょっと脱線しましたが、
ここまで読んでくださっていれば、もうおわかりでしょう。
彼女たちは、ラーメンがイヤなのではない。
そのプレゼン方法がイヤなのだ。

だから個としては、コミュニケーション能力を伸ばすべきなのである。
中川敬は「知識を得て、心を開き、自転車に乗れ!」という歌を歌ったが、
まさに真理であり、進歩である。


今回は「趣味として」なので、軌道修正はいくらでも可能ですが、
趣味という表層のことではなく、「男」として閉じている場合は別問題。
それなりに開く段階を体で覚えていかなければ身に付かないし、
いったん閉じグセがついてしまうと、容易に開けられなくなります。

閉じた扉の向こうで、熱狂的に自分を好きになった超イイ女が
「抱いて!」と叫びながら入ってくる奇跡を信じて待っていたり、
扉の隙間から「来ないかな〜」と覗いているようでは絶望的。

とはいえ、いったん開けば、女子からの厳しいクライアントチェックに
晒されます。
わたしには「恋愛とは、価値観の破壊と再構築である」という信念があり、
よく言う「価値観の相違」なんてのは恋愛レベル白帯であると思いますが、
かといって制作部のこだわりを、営業に妥協させるわけにはいきません。
「ラーメン好きとして」好かれたいなら、ラーメン代理店たる心構えで、
きちんと開く意志を持つしかないのです。

【余談2】
 知り合いにとてもモテる男子がいます。
 (この場合の「モテる」は「女に不自由しない」の意味です)
 確かに容姿にも恵まれていますが、彼はプレゼン能力が非常に高い。
 大多数女子から思いつくままにヒョイヒョイと女子をつまみあげ、
 何人でも同時につきあうことが出来ます。
 ただし彼は、女性に対して常に開きっぱなしであり、
 良心の呵責というものが一切ありません。
 だからクライアントたる女子のダメ出しもまったく平気なのです。



しかし、もうひとつの道がないわけではない。
それは「扉を閉ざして鍵をかけること」です。
だがこれは勇気の要る決断です。たとえば、

「いいか、これがオレの好きな二郎って食い物だ。
 オレがいつ何時これを食いに行くことも容認し、
 むしろお前もこれが完食できなきゃ、オレと付き合う資格はない」

くらい言ってのけ、毛筋ほども後悔しない、そんな漢を目指すのです。
それはもう趣味ではなく、プロフェッショナルの領域といえます。
絶対に惚れてしまう女はいるはずです。
その中にはきっと美女も性格のいい子もいるでしょう。
たとえそれが天文学的確率であろうとも。
(参考にならないほどいい例が、わずか15歳で女性に対しての一切を
 諦めて研究に没頭し、やがてCAと結婚した荒俣センセイである)
そんな人に、ラ部ができることは少ないかもしれないが、
そのストイックさに、わたしは拍手を惜しまない。


…最後まで読んでくれた根性のあるアナタ、
こういう物言いをしていると、モテないこと必至です。即刻やめましょう。
ましてや、

「ラーメンに住む我々が自由を要求して、何度踏みにじられたかを
 思い起こすがいい。ラ部の掲げる、ラーメン好き一人一人の自由のための
 戦いを、神が見捨てる訳はない!」
「大多数女子の無能なるものどもに思い知らせてやらねばならん!
 今こそ男子はラーメンの未来に向かって立たねばならぬ時であると!」

なんて言ってると、ガンダムオタクとすら認識される前に
通報されます。ご用心。

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この記事へのコメント
はじめまして。
今日のブログがとても、読ませる力をもつ文章だと思い、楽しみながら読まさせていただきました。
毎日、期待して読んでいます~。

PS.凪Tをお店で買ったのをきっかけでここを知りました~。
もち、二郎Tも買いましたけどw
Posted by ジン at 2008年03月11日 22:09
●ジンさん

「NO JIRO」買っていただいた方ですか!! それに凪Tも!
お買い上げ&コメント、どうもありがとうございます!
次のTシャツも準備をしていますが、思うように進められず歯がゆい毎日です。

あれこれ妄想の多いわたしの文章ですが、楽しんでいただけたら嬉しいです。
これからもよろしくお願いします!
Posted by 青木 健 at 2008年03月12日 00:45
面白かった~w
私は少数派女子なのね。
かくいう私の彼氏選び、譲れない点のかなり上位にラーメンのセンスが入ったりしますw
すーごく素敵!ラブラブ!と思ってたメンズに、え?ってラーメン店連れて行かれて、サーっと気持ちが下がった経験もあるほどです。
でもね~、別にラーメンも格闘技もお酒も
メンズには好きなものばかりのような気が。
ただの企画物なだけで、ラーメン超好きなメンズが「イケテナイ」カテゴリに入ってはいないような気がする~。
と私が言っても説得力のかけらもないのかーw
Posted by 唄 at 2008年03月12日 17:04
いやー手に汗を握って読ませていただきましたよ。楽しかった。
Posted by satomim at 2008年03月12日 17:24
●唄さん
>と私が言っても説得力のかけらもないのかーw

そうそう、少数派だからね(^-^;
普通、彼氏選びにラーメンのセンス、入れないよ(笑)
でも確かにどんなジャンルでも、「え?」ってのあるよね。
映画でも、ハリウッドしか観ないとか言われたらちょっと、とか。
ラーメンでも、味でも店でも、なにかサプライズがあれば、
それはきっと女性に訴えるものがあるよね!
Posted by 青木 健 at 2008年03月12日 23:16
●Satomimさん
お楽しみいただきなによりです。
わたしも当初の予定より熱が入ってしまいました…。
ラーメン側に立ったというより、モテない男子側に立ったから
かもしれません…(^-^;
Posted by 青木 健 at 2008年03月12日 23:16
SPA!の結果
たしか、一番モテないのはワイン通の人だったよ
Posted by halfaperson at 2008年03月13日 05:36
●halfapersonさん
えええええ〜…………
……でもそうか、それならよかった。
なんでだろ。あれかな、「得てして鼻持ちならない」という?

この文章は、ラーメン好き(といってもわたし個人の)
勝手な被害者意識ご披露とあいなりました(笑)
Posted by 青木 健 at 2008年03月13日 09:21
自分に酔ってしまう趣味って危険なんですよね。
それに造詣が深い事で自分の価値が高まったと勘違いしてしまうタイプの趣味。
マニアックな音楽、オペラ、ワインなんかはそうなってしまいがちなんじゃないかな?

あー、バレンボイムとサイードのすんばらしい対談集があります。
"音楽と社会"(原題:並列と逆説)
バレンボイムは指揮者なんすけど、
「世界が閉じている」
に関連して一部引用。

「音楽に生きるというのは、ほかの興味があってはじめて可能となる。
 文学の中にパラレル(相似形)を見出したり、絵画の中にパラレルを見出したり、
 政治的プロセスの進展の中にパラレルを見出したりする事で初めて可能になる。
 興味があればこそ、そこ(音楽)から類推する力を持つ事ができ、
 その結果、それが自分の奥底にあるものの一部になる。それが音楽と共に生きる事」

みたいな事を書いていましたね。

※もうすぐ長尺の脚本が終わりますんで、映画行きましょうね。
   P.T.AかC.Broの作品はどうでしょう?
Posted by 松 慎一郎 at 2008年03月14日 21:25
●松 慎一郎さま
おお〜松さん!!
なるほど、ワインも「閉じ」がちってことですね。

バレンボイムさんは寡聞にして存じませんが、いいこと言ってますね〜。
(あれっ? ちょっと上から目線?)
きっとそれは音楽以外のどんな分野にでも共通する話で、
それは単に「生きる」などにおいても、当てはまりそうな気がしました。
いい話の引用、ありがとうございます。
あ〜、こういう話しながら飲みたいですわ。

映画セレクトはお任せしますよ!
バッチリ信頼してますので!
Posted by 青木 健 at 2008年03月15日 00:15