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青木 健
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青木 健(あおき けん)イラストレーター。 日本初のラーメン専門誌「月刊とらさん」にて漫画を連載中! ラーメンは数ではなく愛がモットー(1週間で29杯が最高)。 ラーメンをテーマにしたTシャツ屋さん【ラ部】を運営中!
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2007年10月06日

many青葉

以前、ある方の質問を受け、96年組を分析してみたことがあった。
あんまりにも長いのでそれは載せないけど(今回も長いですが)、
自分なりの答えが見つかったりして、面白い試みだった。

96年組というのは1996年に創業し、業界を変えたとまで言われる
3軒のラーメン店の総称である。
言わずと知れた「麺屋 武蔵」「中華そば 青葉」「くじら軒」のこと。

その中の「青葉」について、最近また新たに思ったことがあるので
書いておく(すでにどこかで言われてることかもしれないけど)。
その前にまず青葉のおさらい。

1. ダブルスープという「手法」
2. 豚骨魚介という「明確な方向性」
3. 半熟味玉という「引きの強い彩り」
4. 特製という「システムの単純化」

これらが青葉インスパイア系に共通した基本形であり、
トリプルスープや、濃厚豚骨魚介の銃爪になった要素。
…と、ここまでは比較的よく語られるので、今回は掘り下げません。

青葉が業界に貢献したことは、それでだけではないと思うのです。
上の4つのうち、「特製」に関する話です。
ご存知の通り、特製というのは具を多くしたもので、
客もあれこれトッピングに悩まなくてすむ。
腹が減っている人なら「大盛り」と同じような気分で、
あまりラーメン店に来ない人なら「全部入り」と同じような意味で注文する。
店側にとってもオーダー間違いがなく、手間が省けるなどメリットは多い。

マスコミに紹介されるに至っても、見栄えのいい「特製」が紹介される。
初めて訪れる人は、その紹介されたメニューを見て来るわけだし、
どうせ有名店に来たんだから…という「記念に」的な気持ちもあって、
ほとんどのお客さんが特製を注文しますね。

単なる全部のせとは違ってバランスもいいし、クオリティは高い。
しかし客というのは、だからといってそれを選ぶわけではない。
「チャーシュー、メンマ増量、味玉つきで200円増し」には、納得しない。
通常なら「えーだったらいらな〜い」だろう。
しかし特製という名前を与えることで「オトクである、注文を考えずにすむ、
あれ食べたよと言える…」そうした様々な需要を受け入れてしまったのだ。
「特製」というたったひとつの言葉で、客を納得させてしまったのである。

また、味玉の元祖と言われる「ちばき屋」よりもトロっとさせた味付玉子。
これを「トッピング」のひとつにしなかったこと(単体で注文できない)。
普通では考えられない。
極めてシズル感の高いルックスと、糸で切ってみせるパフォーマンス性。
そうした味玉への強烈なヒキで、特製への注目、ニーズを高めた。

こうして青葉は「誰もが頼むメイン商品」を「特製」にしてしまったのだ。
これはもの凄いことなのである。なぜかというと、

【ラーメン単体の価格を850円に引き上げてしまった】

ということだからである。ちゃんと中華そば650円も用意し、
結果的に「だって特製だから…」という客側の言い訳まで用意した形だ。


なぜわたしがこんなことを考えたか。
わたしは96年当時、中野で働いており、青葉がオープンしてすぐ食べていた。
客などほとんどおらず、しばらくは貸し切り状態で食べることが多かった。

しかし「特製」を頼んだのは、店が混み出して人の注文を見てからだった。
なぜか。
理由は簡単だ。「特製がなんだか知らなかったから」である。
わたしは情報を仕入れてから来たのではない。店ができたから入ったのだ。
だから1杯に850円払うのは納得いかなかった。特製なんて興味もなかった。

しかし今、客はたいした疑問を持たずに、850円の特製を普通に注文する。
無論、味が良いという出発点があり、それを取り上げるマスコミや
ネットの力があり、だからこそ「特製」は活きたとも言える。
「特製があったから繁盛した」のではないが、
「特製という『繁盛する準備』はできていた」というのが正確か。

これに倣って「特製」を取り入れた店は、そういうシステム構築の
苦労もなく、はじめから特製マジックが使えるわけである。

ラーメンの価格を、品質の向上によって、上から引き上げている例は
いくつかあるが、まったく違うアプローチでそれを実現させた青葉は
ラーメン界に非常に貢献していると思うのだ。

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